寝言

全部寝言なんで

反射してた

 

 

助けてほしかった。踏切が点滅したのはもう10年以上前の記憶にしかない、夏のはじめ、黄色と黒を見つめた。左右に揺れ動く赤、一瞬の風が全身に痛かった。私のせいじゃない。街は大きく変わった。今が好きだ。塩素に濡れた私の髪は、夕方の暗い紺に溶け込んだ、その足で、たばこ屋さんの隣にくっついてる駄菓子屋さんが、幼い私には愛おしかった。

見下ろすままでいたかった。透き通る青緑に浮かぶ人間、黄色と青が並んでいた。近くで見たそれは、何色でもなかった。同じ場所に立たされた私は、押されて流されて気づいたら得意な事が増えていた。中途半端だった。水が好きだ。ひんやりと透明で、私の肌から零れ落ちるそれはあまりにも美しい。自動販売機に詰められたアイスは17種類もあったのに、私はいつも決まって2種類しか選ばなかった。

私の瞳が濾過されて、肌から零れ落ちるのは透明の液体になった。やがて、私の身体は赤い息を吐き出すようになった。空は黒い、蛍光灯の白は頭上でぼんやりと、塩素のにおいが立ち込める箱に揺られる、浅い呼吸をしながら、やっと、瞳が閉じられた。見下ろすままでいたかった。あの透き通った色たちは、あそこでしか見られなかった。あのたばこ屋さんも、くっついた駄菓子屋さんもいなくなってしまった。街は大きく変わる。踏切ももういない、空中を走る電車の音を、背中で聞き流す、反対側へペダルを漕ぐのだ。