寝言

全部寝言なんで

 

 

胸の奥の方に空いてしまった虚構から、些細だけど温かい幸福が流れ出しても、どうせまた間に合わせの何らかで埋めようとするのだろう。そうしてる自分に耽溺して、追憶を憎むんだ。傷ついた人間であることをわかりやすく被りたかった。所謂“保険をかける”ってこういうことなのだろう。遅れてやってきた思春期みたいなものを遠目に見ながらも、おもちゃを手に入れたこどものように都度喜び遊んで、取り上げられることに腹を立たせることの繰り返し。そんな感覚が日々を成立させていた。脳が何周も何周も回転して、正常ではなくなっていく。自分と同じくらい正常じゃない人間がこの街には溢れていた。そんな街が気持ち悪くて、時々恋しかった。微睡む油断の間に洩れた声を、空中でかき消す。