寝言

全部寝言なんで

 

 

一ヶ月前よりも空が高くなった。イヤホンで塞いでいない耳はひゅうひゅう流れる風の音をよく拾い入れた。きみもそうだと思ったから、いつもより少しだけ大きい声で笑い合った。わざと聞き返してみた。だってその方が甘いじゃん。甘すぎて脳が痛くなっちゃうくらいの方が、二人とも好きじゃん。変わる街の色の中で変わらないことが愛しくて、意地悪したくなっちゃうんだ。呆れないでよ。横断歩道の白いとこだけ踏んづけた。私のこと大事なら、同じように追いかけて。ほら、空が高い、風が少し強い。ポケットから手を出して、溶けた夕焼けと混ざるオレンジ色の頬を包んで、日常の永遠を誓い合おう。きみの一瞬に、私の永遠を捧げるよ。